テレワークの導入を考えているものの、一部の大企業のように、潤沢な予算があるわけではない中小企業にとっては、導入コストは悩みの種の一つかもしれません。
こうした中小企業のテレワーク導入を支援するため、国や地方自治体が助成金・補助金の交付をはじめとして、さまざまな支援を行っています。
そこで、本記事では国や各自治体が実施している、テレワーク導入・コロナウイルス対策に使える、助成金・補助金の情報をご紹介します。
※本記事の情報は、原稿執筆時点(2020年4月1日)のものです。詳細については、各省庁・自治体のWebサイトをご確認ください。
助成金と補助金の違いを理解しておこう
どちらも事業等の支援のために支給され、ともに返済不要という共通点があるので、「どっちも同じようなもんでしょ?」と思うかもしれませんが、この2つには明確な違いがあるので、助成金や補助金の申請を考えている場合は、しっかり意味の違いを理解しておきましょう。
助成金
定められた一定の条件を満たすことで、必ず支給されるお金で、返済義務もありません。
補助金
定められた期間内に応募し、採択されたら支給されるもので、助成金と同様に返済義務はありません。
また、たとえ期間内に応募したとしても、審査に通らないと補助金を受けることはできません。
審査に通れば受けられるのが補助金、条件を満たせば必ずもらえるのが助成金、と覚えておきましょう。
国が実施する助成金・補助金(全国の企業が対象)
厚生労働省:時間外労働等改善助成金( 新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
厚生労働省が2020年3月9日より、申請受付を開始した「時間外労働等改善助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)」は、新型コロナウイルス対策として、テレワークを導入する中小企業を支援するため、令和元年度(2019年)の申請受付をすでに終了していた、「時間外労働等改善助成金(テレワークコース、職場意識改善コース)の特例コースとして、新たに設けられた助成金制度です。
支給対象
新型コロナウイルス対策として、テレワークを新規導入する中小企業、あるいは試行的に導入している中小企業が支給対象となり、業種によって、資本金(出資額)および常時雇用する労働者数が、以下に該当する必要があります。
助成対象となる取り組み
- テレワーク用通信機器の導入・運用(※PC、タブレット、スマートフォンの購入費用は対象外となります)
- 就業規則や労使協定等の作成、変更など
助成対象となる事業の実施期間
- 令和2年(2020年)2月17日~5月31日
要件(事業実施期間中、以下に該当すること)
- 助成対象の取り組みを実施すること
- テレワークを実施した労働者が1人以上いること
支給額
補助率1/2、1企業あたりの上限額は、100万円
申請期限
- 交付申請:令和2年(2020年)5月29日(金)
- 支給申請:令和2年(2020年)7月15日(水)
詳細については、「時間外労働等改善助成金 (新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース) 」をご覧ください。
厚生労働省:時間外労働等改善助成金(テレワークコース)
時間外労働の制限や、労働時間等の改善のため、テレワークに取り組む中小企業に対して、テレワーク実施に要した費用の一部を助成する制度です。
※令和元年度(2019年)の受付は終了。
※令和2年度(2020年)の受付は、令和2年4月に受付を開始予定。
支給対象(以下に該当する事業主)
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること
- 次のいずれかに該当する事業主であること
- テレワークを新規導入、 あるいは試行的に導入している事業主であること。または、テレワークを継続して活用する事業主であること。
- 時間外労働の制限、その他の労働時間等の設定の改善を目的として、在宅又はサテライトオフィスにおいて、就業するテレワークの実施に積極的に取り組む意欲があり、かつ成果が期待できる事業主であること。
助成対象となる取り組み
以下のうち、いずれか1つ以上を実施する必要があります。
- テレワーク用通信機器の導入・運用(※ (※PC、タブレット、スマートフォンの購入費用は対象外となります)
- 保守サポートの導入
- クラウドサービスの導入
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 労務管理管理担当者や労働者に対する研修、周知・啓発などの取り組み
- 外部専門家(社外保険労務士など)によるコンサルティング
成果目標の設定
テレワーク導入支援を目的としているため、以下の成果目標を達成する必要があります。(達成状況に応じて、支給額が変わります)
- 評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅又はサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる。
- 評価期間において、対象労働者が在宅又はサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した日数の週間平均を、1日以上とする。
- 年次有給休暇の取得促進について、労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数を前年と比較して4日以上増加させる。又は、所定外労働の削減について、労働者の月間平均所定外労働時間数を前年と比較して、5時間以上削減させる。
評価期間
設定された成果目標が、どれくらい達成できたか、の評価を行う期間です。
※令和2年度(2020年)の評価期間については未定です。
支給額
成果目標の達成、未達成によって、以下のように補助率および支給上限が変わります。
詳細については、「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)」をご覧ください。
経済産業省:IT導入補助金2020 1次公募(臨時対応)
中小企業の業務プロセスやバックオフィス業務を中心とした、IT化を促進するため、ITツールを導入する事業者に対し、事業費用の一部を補助する制度です。
今回の1次公募(臨時対応)については、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、中小企業や小規模事業者等の事業活動への影響が懸念されることから、景気対策として緊急実施される補助対策で、在宅勤務等のテレワーク導入に取り組む事業を優先的に支援するものです。
公募期間
交付申請期間:2020年3月13日(金)~2020年3月31日(火)17:00
※1次公募(臨時対応)以降も、6月、9月、12月に改めて公募を行う予定。
交付日:2020年4月中旬
事業実施期間:交付決定後~2020年9月30日(火)
補助の対象
IT導入支援事業者(ITツール等の販売会社)により、事務局にあらかじめ登録されたITツールの導入費用に対して、補助金が支給されます。
※今回の1次公募(臨時対応)については、「IT導入補助金2019」で登録された、IT導入支援事業者およびITツールのみを取り扱い、新規登録は行われません。
自社で独自に選んだITツールの導入に対して、補助金が支払われるわけではありません。本制度の支給対象として登録されている、ITツールを導入することで補助金が支給されます。
補助額・補助率
申請の対象となる事業者
申請の対象となる中小企業・小規模事業者等は以下の通りです。
その他、詳しい申請要件等については、「IT導入補助金2020 1次公募(臨時対応)」をご覧ください。
総務省:情報通信技術利活用事業費補助金(地域IoT実装推進事業)
公募期間
令和元年度(2019年)の募集は終了。令和2年度(2020年)の募集については未定。
補助の支給対象
都道府県及び指定都市を除く地方公共団体、民間事業者が支給の対象となります。
補助額・補助率
補助金の対象となる経費等の詳細については、「情報通信技術利活用事業費補助金(地域IoT実装推進事業)」をご覧ください。
各自治体が実施する助成金・補助金制度
東京しごと財団:事業継続緊急対策(テレワーク)助成金
東京しごと財団が実施する「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」は、新型コロナウイルス対策として、東京都内の中小企業や個人事業主を対象に、テレワークを行うために必要な機器や、ソフトウェアなどの導入を支援するための制度です。
申請期間
2020年3月6日~2020年5月12日
※予算の範囲を超える申請があった場合、申請受付期間内でも受付を終了することがあります。
助成の対象となる事業者
- 常時雇用する労働者が2名以上999名以下で、都内に本社または事業所を置く、中小企業等。
- 東京都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加登録が完了していること。
助成の対象となる費用
- 機器等の購入費
- 機器の設置・設定費
- 保守委託等の業務委託料
- 導入機器等の導入時運用サポートの費用
- 機器のリース料
- クラウドサービス等のツール利用料
※助成対象となる機器には、指定があります。詳細は「募集要項」をご覧ください。
助成額・助成率
詳細については、「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」をご覧ください。
東京しごと財団:はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)
東京しごと財団が実施する「はじめてテレワーク」は、東京都内の中小企業や個人事業主に対して、テレワーク導入の環境構築経費や制度整備費を補助する制度です。
交付申請するためには、東京都が実施する「ワークスタイル変革コンサルティング」を事前に受けることが必須となります。
申請期間
2020年5月29日~2020年3月31日
令和2年度(2020年)の募集開始については、別途発表予定
補助の対象となる事業者
都内に勤務する労働者を2人以上9999人以下、常時雇用している都内に本社または事業所を置く、中小企業等。
補助の対象となる費用
- テレワーク環境の構築(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務を行うための環境構築費、モバイル端末等の整備費用)
- 従業規則へのテレワーク制度整備(就業規則の策定等に要する専門家への委託費)
助成額・助成率
詳細については、「はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)」をご覧ください。
東京しごと財団:テレワーク活用・働く女性応援助成金
東京しごと財団が実施する「テレワーク活用・働く女性応援助成金」の「テレワーク推進コース」は、テレワーク環境の整備に要する費用の一部を助成する制度です。
申請期間
令和元年度(2019年)の申請受付は終了。
令和2年度(2020年)の申請受付については未定。
助成の対象となる事業者
常時雇用する労働者が2名以上999名以下で、東京都内に本社または事業所を置く、中小企業等。
助成の対象となる費用
- テレワーク機器の導入費用(モバイル端末等の整備費用、ネットワーク整備費用、システム構築費用、関連ソフト利用料、環境構築の専門家への委託費用)
助成額・助成率
上限額:250万円
助成率:1/2
詳細については、「テレワーク活用・働く女性応援助成金」をご覧ください。
東京都:働き方改革宣言奨励金
東京都が実施する「働き方改革宣言奨励金」は、働き方・休み方の改善への取り組みにかかる費用を助成し、企業の働き方改革の推進を支援する制度です。
申請期間
令和元年度(2019年)の申請受付は終了。
令和2年度(2020年)の申請受付開始については未定。
助成の対象となる取り組み
以下の「A」または「B」、もしくは「AとBの両方」に取り組むことで、助成金の申請が可能となります。
「A.働き方改革宣言事業(必須)」
雇用する正社員の働き方・休み方について、以下1~4のすべての取組事項を実施する。
- 長時間労働の削減、年次有給休暇等の取得促進に向けた問題点の抽出
- 原因分析及び対策の方向の検討
- 目標及び取組内容の設定(働き方改革宣言書の作成)
- 社内周知
「B.制度整備事業(任意)」
以下1~2の両方とも実施する。
- 「働き方の改善」または「休み方の改善」に定める制度について、労使協定を締結
- 締結した協定を踏まえ、制度内容を就業規則等に明文化
「働き方の改善」および「休み方の改善」で定める制度は以下の通り。
助成の対象となる事業者
東京都内で事業を営む、常時雇用の労働者が300人以下の中小企業等。
助成額
詳細については、「働き方改善宣言奨励金」をご覧ください。
横浜市:中小企業職場環境向上支援助成金
横浜市が実施する「中小企業職場環境向上支援助成金」は、企業が働きやすい職場環境を整備するために、就業規則の改定やテレワークの導入にかかる費用の一部を助成する制度です。
申請期間
令和元年度(2019年)の申請受付は終了。
令和2年度(2020年)の申請受付開始については未定。
助成の対象となる事業者
横浜市内に本社を置き、常時雇用する従業員が2名以上の中小企業。
助成の対象となる費用
- 職場環境向上のためのコンサルティング(就業規則等の変更、研修)
- 休憩室の設置、女性専用トイレ・更衣室の設置
- テレワーク、フリーアドレス導入等のシステム整備
- 職場環境PR(動画、ホームページ作成)
助成額・助成率
詳細については、「中小企業職場環境向上支援助成金」をご覧ください。
横浜市:中小企業設備投資等助成制度(先端設備導入型)
「中小企業設備投資等助成制度(先端設備導入型)」は、横浜市内の中小企業が行う生産性の向上に資する設備投資に対して、費用の一部を助成する制度です。
交付申請書の提出後に設備の売買契約を締結し、助成対象となる費用全額の支払いを、2020年12月25日までに完了していることが条件となります。
※当該制度の申請区分にある「コロナ対策型」が対象とする、新型コロナウイルス感染症の対策に資する設備投資に限っては、2020年1月6日まで遡って対象とします。
申請期間
申請期間:2020年6月22日~2020年7月3日
事前相談実施期間:2020年5月20日~2020年6月12日
※事前相談への参加は必須です。事前相談を受けていない場合、助成金の申請はできないのでご注意ください。
助成の対象となる事業者
横浜市内の中小企業
助成の対象となる費用(コロナ対策型)
新型コロナウイルス感染症の対策に資する設備の導入
※設備等の契約日を2020年1月まで遡って対象とします。
助成率・上限額
助成率は発注先により、異なります。
詳細については、「中小企業設備投資等助成制度(先端設備導入型)」をご覧ください。
愛媛県:松山市テレワーク在宅就労促進事業(発注奨励金)
こちらは松山市が実施している制度で、松山市が指定する事業者に対して業務を発注する全国の事業者に対して、発注奨励金が支給されます。
支給の対象となる事業者
松山市内でテレワークを行う者を雇用する指定事業者(松山市が指定)に、業務を発注する全国の事業者に対して、支給されます。
支給額
交付対象者が指定事業者に発注した金額(消費税及び地方消費税を除く)の10%
詳細については、「松山市テレワーク在宅就労促進事業(就労奨励金及び発注奨励金)」をご覧ください。
国や各自治体がテレワーク導入を支援するため、助成金や補助金の支給だけでなく、無料相談やセミナーなどを開催し、テレワーク普及の後押しを行っています。
本記事で紹介した助成金・補助金の令和元年度(2019年度)の申請受付は既に終了しているものもありますが、令和2年度(2020年度)に改めて募集が始まる可能性もありますので、こうした支援制度の情報をチェックし、テレワークの導入に活用していきましょう。
アバーインフォメーション株式会社 Webマーケティング/「WEB会議DEどうでしょう」制作・執筆担当
台湾のWebマーケティング企業で、Webディレクターとして現地企業のWeb制作ディレクションや、Webマーケティングセミナーの講師などを担当。日本に帰国後、訪日外国人向けWebメディアの編集チームに加入。主に繁体字中国版の編集ディレクターとして、コンテンツ企画等を担当。現在は、アバーインフォメーションのWebマーケティング担当として、「WEB会議DEどうでしょう」の運営、記事執筆のほか、さまざまなPR施策を担当しています。
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